- 津波の基礎知識
一般社団法人全日本防災計画協会
黒田尚寛
一般社団法人全日本防災計画協会
黒田尚寛
東日本大震災でも甚大な被害をもたらした津波。津波から生き抜くために、津波に関する基本的な知識を身につけましょう。津波の発生メカニズムや被害の大きさについてみていきます。
この章では、津波が起こる仕組みや伝播の特徴について説明します。
津波は海底から海面まで全ての海水が動くのに対して、波浪は風の力によって発生する波のことで、海面付近の海水だけが動きます。つまり、例え同じ高さのものであっても、沿岸に押し寄せる一回の海水量が異なるので、波浪より津波の力は大きいということになります。
・地震本部 津波
https://www.jishin.go.jp/resource/terms/tm_tsunami/
・日本気象協会tenki.jp 津波の起こるしくみ
https://tenki.jp/docs/note/tsunami/page-1.html
・東北大学災害科学国際研究所 講義1:津波のメカニズム
http://tsunamibousai.jp/tsunami_special_seminner2017_imamura.pdf
・気象庁 津波発生と伝播のしくみ
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/tsunami/generation.html
・仙台管区気象台 津波のしくみとくちょう
https://www.jma-net.go.jp/sendai/kyoiku/eqvol/tunami_ws.pdf
・河北新報
インドネシア津波、海底地滑り原因か 東北大が報告会
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201810/20181012_13009.html
・東京新聞 Web
インドネシア津波 噴火が原因 日本でも
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122402000132.html
・海底火山噴火に伴うマグマ蒸気爆発やカルデラ陥没による津波の生成
柿沼太郎・山下啓・松本洸
津波工学研究報告 Vol.30 111-115 2013.
http://www.tsunami.civil.tohoku.ac.jp/hokusai3/J/publications/pdf2/vol.30_14.pdf
・津波の基本知識
https://www.jma-net.go.jp/ishigaki/know/tmanual/pdf/m5.pdf
・津波基礎知識 津波の動き
http://tsunami-dl.jp/old-content/TSUNAMI/education/kiso/03.htm
・海洋政策研究所 津波の正体を知る
https://www.spf.org/opri/newsletter/275_3.html
・気象庁 津波について
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq26.html
津波による被害を減らすためには、津波の一刻も早い予測が極めて重要です。気象庁が構築している「津波予報データベース」によって、24時間リアルタイムで監視している地震観測データから津波の影響を受ける場所、津波の高さ、到達時間の予想が分かるようになっています。その予想をもとに気象庁は津波警報や注意報を発表しています。
地震などの影響で海底の地形が急激に変動し、それに伴い海水が上下に変動することで発生する大波のことです。
津波が発生する原因は様々で、代表的な原因としては地震、地滑り、火山などがある。
以下、原因と津波発生のメカニズムについて詳しくご説明します。
津波の発生原因の75%が海底での地震によるもので、地震による津波発生の仕組みとしては下記の通りです。
1.地震が発生し、海底が隆起・沈降する
2.海底の隆起・沈降によって、海面が上下に変動する
3.海面の変動が大きな波となって、海岸に押し寄せる
津波の発生原因の8%が地滑りによるもので、海底地滑りによる津波発生の仕組みは下記の通りです。
1.海底で地滑りが発生
2.地滑りで崩れた空間に海水が流れ込み、引き潮が発生する
3.地滑りした大量の土砂が海水を押し上げて押し波が発生
4.津波が発生
沿岸地滑りによる津波発生の仕組みは下記の通りです。
1.沿岸の山崩れなどで大量の土砂が海中に滑り込む
2.土砂が海中に入る際に大きな波が発生する
津波の発生原因の5%が火山活動によるもので、海底火山の噴火による津波発生の仕組みは下記の通りです。
1.海底で火山が噴火する
2.噴出物が放出されて海水の運動が発生し、津波が起こる
また、マグマの水蒸気爆発によって津波が発生する
陸での火山噴火による津波発生の仕組みは下記の通りです。
1.火山が噴火する
2.噴火によって山崩れが起き、大量の土砂が海中に入る
3.土砂が海中に入る際に大きな波が発生する
津波の発生原因の3%が気象によるもので、それ以外は原因不明といわれています。
「津波の前には必ず潮が引く」という言い伝えがあります。しかし、必ず潮が引くわけではありません。
地震を発生させた海底の断層の傾きや方向、津波が発生した場所と海岸との位置関係によっては、潮が引くことなく津波が押し寄せる場合もあります。
津波の伝播において、どのような性質があるのかについてみていきます。
・津波の速度は水深に比例するため、水深が深いほど速度は速くなり、水深が浅いほど速度は遅くなります。
・水深5,000mでは、時速800km(ジェット機並みの速さ)
・水深500mでは、時速250km(新幹線並みの速さ)
・水深100mでは、時速110km(チーター並みの速さ)
・水深10mでは、時速36km(100m走のオリンピック並みの速さ)
→人が走って逃げきれるものではありません。津波警報が発表されたら、即座に避難しましょう。
津波が陸に近づくと、速度は遅くなります。その為、後から来る速い津波が前の津波に追いつき、津波が高くなります。
・水深5,000mでは、1mの高さ
・水深500mでは、2mの高さ
・水深100mでは、3mの高さ
・水深10mでは、9mの高さ
津波は、海岸付近の地形に影響を受けるので、地形によっては、津波が高くなる場所があります。
(1)湾の奥
津波が湾の奥の様な狭く浅い場所に入り込むと、津波のエネルギーが集中して波が高くなります。湾の形によって波の高さが異なり、袋型、直線海岸、U字型、V字型の順に波が高くなる傾向があります。
(2)岬の先端
津波は海底の浅い所へ曲がりこむという性質があります。岬の先端は海底が浅いため、津波のエネルギーが集中しやすくなり、波が高くなります。
(3)岬や島の裏側
津波は、岬や島などの裏側にも回り込みます。片側から回り込んだ津波と、もう片方の側から回り込んだ津波がぶつかり、その結果、大きな津波が押し寄せることもあります。
津波の破壊力は脅威的であり、その被害は甚大になりがちです。この章では、津波の破壊力がどのくらいあるのかを説明し、過去の津波による被害についてみていきます。
津波は海底から海面までの海水全体が動くエネルギーの大きな波であり、津波の破壊力はとてつもなく大きいものです。
津波のエネルギーは波の高さの二乗なので、波が高くなればなるほど、被害が大きくなります。
〇高さと被害の目安
・高さ0,2~0,3m
→人が速い流れに巻き込まれてしまう危険性
→気象庁では、0,2m以上の津波が発表されると津波注意報を発表するようになっている
・高さ1m
→木造家屋は部分的破壊が起こる
・高さ2m
→木造家屋は全面破壊
・近地津波
→日本の沿岸から600km以内に発生した地震による津波
→日本付近を発生源とする津波
・特徴
→地震が発生してからの津波の到達時間が早い
→早いところでは数分から30分程度で到達
→避難する時間が短い
〇過去の被害
・1896年 明治三陸地震
→最大津波高38,2m
→死者21,959名
・1933年 昭和三陸地震
→最大津波高28,7m
→死者3,064名
・1993年 北海道南西沖地震
→最大津波高31,7m
→死者142名
・2011年 東日本大震災
→最大津波高40,1m(津波において国内観測史上最大)
→死者15,894名、不明者2,561名、負傷者6,152名
→住宅被害について
*岩手・宮城・福島県の3県
全壊:117,765棟
半壊:240,660棟
一部破壊:384,608棟
・遠地津波
→日本の沿岸から600km以遠に発生した地震による津波
→その地点で地震波動を感じないような遠方の地震による津波
→日本国外を発生源をとする津波
・特徴
→地震発生から数時間~20数時間で到達
〇過去の被害
・1960年 チリ地震
→最大津波高6m
→地震発生から約22時間30分後に到達
→死者142名、被災者160,000名
・人的被害は出なかったが、養殖業や漁業に被害を与えるような遠地津波が過去に何度も起こっている